Tuesday, November 02, 2004

「民主主義の先進国」アメリカで、大統領選挙を見守る

今日11月2日は、アメリカ全土で数千数万の公職の椅子の行き先が決まる投票 日である。2000年の大統領選挙は、日本で対岸の火事を見るごとく見守っていた私にも小さな傷を残したくらいだから、その結果の重みをこの四年間、直に 背負ってきたこちらの人たちが、今度こそは「一人一票」の原則を死守しようとほとんど半狂乱になっているのも無理はない。マイノリティーのコミュニティー に情報操作のビラが撒かれたり(「11月3日には必ず投票に 行こう」とか、「もしあなたに犯罪歴があったら、たとえそれがスピード違反でも、あなたに投票権はありません」とか。)、ジョージア州のある郡のヒスパ ニック有権者全員の市民権に云われなき疑問符を付ける訴訟が起こされたり、選挙をめぐる不審な動きには枚挙に暇がないけれど、日本人の私にとって驚きなの は、いかに多くのアメリカ人が選挙の技術的な側面に疑いを持っているか、ということと、その延長線上に漂う大規模かつ組織的な裏工作の臭い。コンピュー ターベースの投票機には不正操作の噂が付きまとい(これには、ブッシュ政権との関係も取り沙汰される納入会社が、各有権者にそれぞれの投票結果を記録した レシートを発行することを頑強に拒否していることも一役買っているのだけれど)、フロリダでは選挙権を剥奪された元囚人のリストに、(2000年に引き続 き再び)何の関係もない黒人有権者が「手違いで」大量にリストアップされ、インターネット上では不在者投票用紙の請求フォームが数週間にわたって海外から アクセスできなくなるーーーナイーブになるつもりはないけれど、これほど大規模な不正操作は、私の知る限り近年の日本にはなかった。二つの大政党はお互い を数々の選挙違反を犯しているとして非難しあうし、民主主義の根本たる選挙制度への信頼がみるみるうちに崩れていくのを見ていると、他人事ながら心配に なってしまう。これでは、アメリカ人の多くが軽蔑と憐憫の入り交じった眼差しを向けるであろう、「第三世界」の腐敗した民主主義と、それへの絶望に端を発 した武力闘争も、そんなに遠い国のことではないのではないか、と。ごく普通の一般市民が、自らの意思を投票を通じて実現することに熱くなるーーーそれは参 加型民主主義の理想であり根本であり、私を含めて民主主義の怠惰な消費者が多くを占める日本が学ぶべき態度ではあるのだけれど、それが歪められた選挙制度 と組み合わさったときに、はけ口のないいらだちがどんな形で噴出するのか、背筋が寒くなる。

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